「話を引き出したいのに、なかなか続かなくて」
面談や1on1を控えた管理職の方から、研修でよく伺うご相談です。
質問はいくつも用意した。それでも返ってくる答えは短くて、こちらが次の質問を出して、また短く返ってくる。時間だけが過ぎていきます。
私は放送の世界に20年以上おりまして、取材で人の話を伺うのが仕事でした。それでも、こちらは聞いているつもりなのに話してもらえない、という日はあったんですね。
質問を用意しても、話が続かないことがあります
面談の前に、聞くことをメモしておく。研修でもよく伺う準備の仕方です。準備をすること自体は、よいことです。
ただ、手元にリストがあると、相手の答えを聞きながら「次はどれを聞こうか」と探し始めます。
探している時間は、相手にも伝わります。
こちらが次の質問を用意しているのが分かると、相手は「ここまでで区切ろう」と考えます。話は要点だけになり、その要点も、こちらが聞きたがっている方向へ寄せられていきます。
取材でも、同じことが起きていました。
聞きたいことを持ちすぎて伺うと、相手の答えを最後まで聞かずに次へ進んでしまう。あとで録音を聞き返すと、いちばん面白い話が始まりかけたところで、自分が質問をかぶせているんです。
面談、1on1、採用の面接。人の話を伺う場面は、管理職になるほど増えていきます。そこで話が続かないとき、足りないのは質問ではないことが多いです。
相づちが、相手の話を止めていることがあります
意外に思われるかもしれませんが、相づちには、話を促す打ち方と、話を締めくくる打ち方があります。
聞いている側は「うなずいて聞いている」つもりでも、その相づちが相手には区切りの合図に聞こえていることがあります。
分かれ目は、言葉の中身ではなく、音のほうにあります。
「はい!」「なるほど!」と語尾が上がる相づちは、区切りの合図として聞こえやすいです。
一文の途中で何度もうなずかれると、話す側は「早くまとめなければ」と感じます。
相手が言い終わる前にかぶせると、その先にあった言葉は出てこなくなります。
相づちの音は、放送の現場でずいぶん気にしてきました。
自分の相づちが、相手の語尾にきれいに重なっている。映像では熱心に聞いているように見えるのですが、音だけを聞くと、相手の話を毎回こちらが閉じていました。
「はいはい」と二回続けるのも、会議のあとの立ち話で「ですよね」と重ねるのも、同じ働きをします。急かすつもりはなくても、そこで話は一区切りついてしまいます。
相づちは、なくすものではなく、打ち方を選べるものです。
相手が話しやすくなる、3つの聞き方
直し方は、それほど多くありません。研修でも、この3つからお願いしています。
相づちの音を、少し下げる
「はい」を、いつもより低い音で置いてみます。
低い相づちは、相手の話の下に敷かれる感じになります。上から蓋をするのではなく、下で支える。同じ言葉でも、音の高さによって受け取られ方は違ってきます。
相手の言葉を、そのまま返す
相づちを減らすと、では何を返せばいいのか、という問いが残ります。言い換えずに、最後の数語をそのまま返します。
「人が足りなくて」と言われたら、「人が、足りない」と返す。要約したり、こちらの言葉に置き換えたりしません。
置き換えると、相手は「そういう意味ではなくて」と説明し直すことになります。そのまま返せば、説明し直す手間は減ります。研修でお願いしているのも、この返し方です。
打つ場所を、一文の終わりまで待つ
途中でうなずかず、一文が終わってから一度だけ打ちます。
はじめは、落ち着かないものです。ただ、終わりまで待つと、相づちの数はひとりでに減ります。
質問を足すより、相づちを減らす。急いで受けるより、一拍待つ。言葉を探すより、音を選ぶ。
低い声を出そうとして力むと、かえって届かなくなります。息の通し方については、「声が小さいと言われる人へ。無理に大声を出さずに届く声を作るコツ」という記事にも書きました。
残るのは、黙っているあいだをどう過ごすかです。
沈黙を埋めない、という選択
面談でいちばん居心地が悪いのは、相手が黙ってしまう時間ではないでしょうか。
気まずくて、つい別の質問を出したくなります。ところが、その沈黙は、相手が言葉を探している時間です。
放送の現場では、無音は事故として扱われます。ですから、間ができるとかぶせる癖が体に入っていました。
その癖が、取材でいちばん邪魔をしました。
相手が黙ったところでこちらが話し始めると、探しかけていた言葉は引っ込みます。そこから同じ話に戻るのは、なかなか難しいものです。
黙っている間、聞いている側は何もしていないように見えます。実際には、待つという仕事をしています。
相手が黙ったら、視線を外さずに、その間をそのままにしておきます。
手元のメモは見ません。ページをめくる音は、相手にもよく聞こえています。
どうしても間がもたないときは、相手の最後の言葉を、もう一度小さくつぶやきます。
間そのものの働きについては、「一本調子から抜け出す。伝わる話し方の『間』の作り方」という記事にも書いています。話すときの間と、聞くときの間は、同じものです。
聞くことは、待つことでもあります
聞き上手と言われる方を、ひとり思い浮かべてみてください。たくさん質問してくる方ではないはずです。
こちらが話し終わるまで、静かに待っていてくれる。その方の前だと、自分でも思っていなかったことまで話してしまう。そういう聞き方をされているのだと思います。
面談の目的が「相手の考えを引き出すこと」なら、こちらが話す量を減らすほど、その目的に近づきます。
もちろん、黙っていればよいというものではありません。伝えるべきことは、面談の終わりにきちんと伝えます。順番の問題です。
よくある質問
相づちを減らすと、冷たい印象になりませんか
オンラインの面談でも同じですか
相手が話したくない様子のときは
次の面談では、質問をひとつ減らして、相づちをひとつ遅らせてみてください😊
